第2回定例議会代表質問 2022年6月15日
ロシアのウクライナ侵略に便乗しての憲法改悪を許さず、大田区平和都市宣言に基づき平和を構築する大田区の役割について
最初に、ウクライナへのロシアの侵略をやめさせ、憲法9条を活かした平和外交で戦争の心配のない東アジアをつくることに関連して質問します。
国連憲章をじゅうりんしたロシアのウクライナ侵略の下、まさに戦争か平和か、日本の進路も問われています。ロシアのウクライナ侵略は、国連憲章をじゅうりんした侵略であり、原発、病院、学校、民間人への攻撃は国際人道法に反する戦争犯罪です。また、核兵器大国を誇示し、核の先制使用で世界を威嚇する無法行為は許せません。
歴史は確実に進んでいます。これまで米ソの侵略について、国連総会で非難決議が出されたのは6回ですが、今回のロシアの侵略非難決議に賛成した国は過去最高の141か国、そのうち半数以上が非同盟諸国です。私たちはここに確信を持って国際世論を広げ、プーチン政権を包囲し、侵略をやめさせようではありませんか。
岸田首相は5月23日の日米首脳会談で、敵基地攻撃能力の保有を検討し、そのために軍事費の相当な増額をアメリカに誓約しました。自民党は、5年以内にGDP2%以上、年間11兆円以上に増額する提言を決めましたが、その予算を確保するには、消費税増税か、社会保障費削減か、将来、国民の借金となる赤字国債の増発か、3通りしかなく、途方もない財源が必要になり、国民の暮らしを押し潰します。維新の会は自民党よりもさらなる右翼的立場から、戦争をあおり立てる突撃隊の役割を果たしています。専守防衛を投げ捨てよと公然と叫び、核共有を掲げて、非核三原則の破壊を主張しています。
こうした状況の下で、日本共産党が提案している、東アジアに平和をつくる外交ビジョンの意義がいよいよ大きくなっています。ASEANは東アジアサミット、EASを強化し、この地域を対抗でなく対話と協力の地域にし、行く行くは東アジア規模の友好協力条約を展望しようという壮大な構想、ASEANインド太平洋構想、AOIPを明らかにしています。今、日本が取り組むべきは、ASEANの国々と手を携えて、AOIPを本気で推進することだと思います。9条を活かした対話と協力の地域にしていく努力こそ求められています。
核兵器は人間に持たせてはならない、絶対悪の兵器です。大田区平和都市宣言にあるように、核兵器のない世界の実現は文字どおりの急務です。核抑止力は、相手が核兵器で来たら、こちらも核兵器で対応するという論理であり、まさに核軍拡競争に陥っていくことになります。プーチン政権が核兵器のボタンを押すことも辞さない態度に核抑止力はもはや意味がありません。核兵器を地球上からなくす以外にありません。日本が進むべき道は、核抑止の呪縛から抜け出し、核兵器禁止条約に参加することであり、核兵器禁止条約に調印し、その先頭に立つことを求められています。大田区長はロシア抗議声明を出していますが、核兵器の威嚇への抗議声明も必要ではないでしょうか。
●そこで伺います。大田区平和都市宣言で、「平和憲法を擁護し核兵器のない平和都市であること」と宣言している大田区として、ロシアのプーチン政権の核兵器の威嚇に対して抗議の声明を出すことを求めます。お答えください。
【 松原区長 】
まず、平和都市宣言と核兵器への抗議声明についてのご質問ですが、令和3年12月の参議院予算委員会におきまして、岸田首相は核兵器禁止条約について、核兵器のない世界に向けての出口に当たる重要な条約だとした上で、世界最大の核兵器国である米国を動かすことを日本としてやらなければならない、信頼関係をしっかりと構築していくところから始めたいと表明しています。日本は唯一の戦争被爆国として非核三原則を堅持し、核兵器のない世界の実現に向け、国際社会による核軍縮、不拡散の議論を主導しています。私は、平和都市宣言を行った首長として、3月4日にロシアのウクライナへの軍事侵攻に抗議する声明を発出し、一刻も早い平和的解決に向けた、国際法に基づく誠意を持った外交努力を強く求めており、改めて抗議声明を出すことは考えておりません。引き続き、区の責務として、区民の皆様と共に平和の尊さについて考え、次の世代に語り継ぎ、平和な世界を築いていくという趣旨に沿って、平和関連の各種事業を着実に進めてまいります。
物価急騰から、区民の暮らしと営業を守るためのやさしくて強い経済に転換することについて
【 黒沼議員 】
次に、物価急騰の下、新自由主義の矛盾が噴き出し、その転換は待ったなしと考え、質問します。
農林水産省は輸入小麦の売渡価格を17.3%引き上げ、外食ハンバーガーは6.7%、タマネギ98.2%、リンゴ35.9%、電気料金52円から127円、ガス代が3割増、ベニヤ板が2倍、半導体の高騰など、あらゆる生活必需品が急騰しています。その原因は新型コロナとウクライナ侵略だけではありません。アベノミクスによる異次元の金融緩和政策が異常円安をつくり出したことが物価高騰を招いた重要な要因であり、その責任は極めて重いと言わなければなりません。同時に、物価高騰でこうも暮らしが厳しいのは、岸田首相も弊害と言わざるを得なくなった新自由主義政策による実質賃金の大幅な低下と年金もが下がり続けていること、教育費負担が重く、消費税の連続増税で家計が痛んでいるからです。こうした弱肉強食の新自由主義が日本経済を冷たく弱い経済にしてしまったことが国民の生活苦の基本にあります。ところが、岸田首相は、それに加えて、先月5日のロンドン演説で貯蓄から投資へと国民の預貯金や老後資金を危うい投資へと促し、奪おうとする資産所得倍増プランを表明するなど、冷たく弱い経済をさらに進めようとしています。
そうした中、地方自治体の大田区としても緊急に区民救済に向け手を打つべきとして、日本共産党大田区議団は区長に対して、7項目の要望を提出しました。その内容は、1、事業用燃油、原材料の高騰に対して支援する、2、消費税減税とインボイス中止を政府に求める、3、低所得者への特別給付金は住民税非課税世帯に限定せず、区独自に拡充する、4、事業復活支援金は持続化給付金並みに引上げを政府に求めるとともに、独自に支援する、5、小中学校、保育園の給食費を必要な栄養確保のため助成する、6、緊急小口資金などの返済条件を緩和する、7、予算化された施設使用料値上げなどを中止するの7項目です。特に全ての品目を一気に下げるための消費税減税がどうしても必要です。
地方自治体でも努力が始まっています。足立区は低所得課税世帯への10万円支給、国保料値上げの中、据え置く自治体は、立川市3年連続、西東京市2年連続など、住民の立場で行政を進めています。文京区では、認可保育園、私立幼稚園の給食費1人1食15円を今年度末まで補助し、財源は地方創生臨時交付金で賄い、小学校、中学校の補助も行う予定で、第2回定例会で補正を組むとのことです。
●伺います。大田区でも物価急騰による区内への影響を調査し、実態を把握するとともに、我が党が要望した項目の中で、給食費について、国も東京都も一定の支援を始めました。文京区のような地方創生臨時交付金で大田区も給食費の支援を実施すべきです。お答えください。
【松原区長】
次に、小中学校及び保育園の給食費への支援についてのご質問ですが、区立小中学校及び保育園等における給食につきましては、国が定めた日本人の食事摂取基準に基づいて設定した栄養目標に従い、成長、発達に応じ、健全な発育に必要な栄養量が確保できる給食を提供しております。給食費については、区立学校では、食材費について、給食費として保護者より徴収して実施をしております。平成29年度以降、給食費の増額は行っておらず、さらに、生活困難と認められる世帯へは、生活保護及び就学援助事業により支援をしております。一方、認可保育所の給食費につきましては、区独自に子育て世帯の経済的負担の軽減を図る措置を講じております。いずれにしましても、現時点では、各施設において、児童・生徒に必要な栄養を確保した給食提供が行えております。区といたしましては、先ほどもお答えしたとおり、引き続き区立小中学校や保育園等の状況を適宜確認し、適切に対応してまいります。
●さらに伺います。コロナ禍と物価高の影響を受けている事業者に融資だけではなく、物価高騰による損失補塡への直接支援などを行うべきです。お答えください。
【松原区長】
次に、事業者に対する直接支援に関するご質問ですが、区では、コロナ禍の影響を受けた区内中小企業、小規模事業者の皆様に対する資金調達支援として、新型コロナウイルス対策特別資金を令和2年3月より実施してまいりました。さらに、昨年の9月以降は一般運転資金の利子補給加算に切り替え、社会情勢の変化への対応として、当面の間、受付期間の延長を行っております。こうした融資あっせん制度に対する区の利子補給は、融資を受けた事業者の皆様が金融機関に支払う利子相当分を区が代わりに負担するものであり、まさに直接的な支援制度であると言えます。本定例会に提出した第2次補正予算において、利子補給加算の延長に伴い、今年度中に必要となる経費について計上させていただいておりますが、これに加えて、新たに直接支援を行っていく考えは現時点では持ち合わせておりません。
「デジタル田園都市構想」による大田区の重点プログラムの新たな自治体経営へのシフトの問題点、及び新空港線の課題について
【黒沼議員】
次に、新自由主義から脱却して、大田区産業の独自の発展を目指して質問します。
維新の会も解雇の自由化など、新自由主義を最も露骨に推進しています。これに対して日本共産党は、日本経済を新自由主義から優しく強い経済に大転換する五つの提案を行っています。第1は、消費税5%への減税とインボイスの中止です。物価高騰による負担は、低所得者には消費税5%増税並みと言われています。世界では89か国と地域が付加価値税、消費税を引き下げています。たった半年で7か国も増えています。日本で引き下げる場合の財源を、円安で空前の利益を上げている大企業と資産を膨らませている富裕層に応分の負担を求めることは、税の公平性から重要な意義を持ちます。第2は、政治の責任で賃金の上がる国にすることです。賃金が上がらず、内部留保だけが膨らむというゆがみを正すもので、国会で岸田総理は我が党の議員の質問に否定できませんでした。第3は、社会保障と教育費の予算を経済力にふさわしく充実させることです。これは国民の購買力を高め、そのことが健全な経済成長を促す大きな力となるものです。第4は、気候危機打開の本気の取組です。第5は、ジェンダー平等の視点を貫くことです。特に日本では、男女の賃金格差が深刻です。岸田首相が5月に格差解消に向け、企業に格差公表を義務づけたことは大きな前進です。
世界経済における日本の位置は驚くほど低下しています。為替相場やインフレを排除した購買力平価で比較すると、日本のGDPは、中国、アメリカ、インドに次ぐ第4位です。沈む日本経済からの脱出は、むやみに成長に走ることではありません。また、アメリカに代わって最大貿易国になった中国を仮想敵国にして、軍備を増強することでもありません。やるべきことは、新自由主義政策とアベノミクスからの大転換です。第1に、アベノミクスに痛めつけられた99%の国民の経済利益の回復です。しかし、大田区は、HANEDA×PiOにおける鹿島グループとの関係や、羽田旭のインダストリアルパーク羽田の三井不動産、日本生命との官民協働、新空港線計画の東急電鉄、DXでのNTTなどに見られるように、大田区は大企業奉仕です。この変換が求められます。
大田区は、これまで障がい者スポーツ用具、車椅子など福祉関係や、農業機械製作では、二つの企業が島根県企業に納品、鳥取県企業に試作品納品、秋田県横手市に納品、北海道北見市に納品など農業関係、誤嚥防止用ストロー製品化など医療関係など、粘り強く取り組まれています。そして、今、ビジネスチャンスとしての環境の視点から、ブランド品開発で地域に好循環をもたらす自然再生エネルギー分野があります。
●そこで伺います。大企業支援ではなく、中小企業の活路を切り開く支援施策への転換を求めます。お答えください。
【松原区長】
次に、ブランド品開発による中小企業支援に関するご質問ですが、区内には、金属加工に関連するあらゆる種類の工場が集積し、日本の製造業の基盤を支えております。一方で、近年は、アジア諸国の技術力向上や工作機械の高度化等により、単純に図面をベースに製造する領域は競争が激しくなっています。このような中、区内中小企業では、単純な部品製造よりも付加価値の高い企画、設計などの新たな分野を開拓する企業も複数あり、区といたしましても、それら新たな展開を支援しています。一例を申し上げますと、全国的にもニーズが多い草刈りロボットの共同開発では、課題に対し、企画、設計の段階から提案を行い、卓越したものづくり技術を活かすことで、急斜面に対応しながらも軽量化を実現し、これまでにない製品の開発に成功いたしました。区では、これら上流領域のさらなる受注拡大を目指して、デジタル技術を活用し、中小企業の受発注の仕組みを構築しています。引き続き、利益率の高い仕事を獲得するための大田区ものづくりブランドのプロモーション、羽田イノベーションシティをハブとした受注機会の創出等により、区内企業の稼ぐ力の強化を支援してまいります。
【黒沼議員】
次に、インボイス制度の大田区への影響について伺います。
インボイスが導入されれば、これまで消費税を免除されていた小規模の事業者や個人事業主に新たな税負担がのしかかります。物を売った事業者は、客から受け取った消費税から仕入れにかかった消費税を差し引いて納税します。今、帳簿で行っている計算は、インボイスを使って納税することが義務づけられます。
深刻なのは、事業者の税と事務処理の負担増です。現在、年間1000万円以下の業者は免除されています。インボイスは課税業者しか発行できません。今は課税業者が免税業者から仕入れた場合、控除できます。今度はインボイスのない仕入れには控除が認められません。そうなると、免税業者から消費税をもらわないと自腹を切ることになるので、取引停止になりかねないことが想定されます。取引を続けるためには、売上げ1000万円以下でも課税業者になるしかなくなります。倒産や廃業が強く懸念されます。日本出版者協議会は中止を求める声明を出しました。あるフリーランスの方から伺ったことですが、年間200万円の収入で20万円の経費があった場合、消費税の負担は16万円に上り、年収600万円では最低でも30万円の消費税を払わなければならなくなるとのことです。経費が少ない人ほど消費税が大きくなるということです。食費などに大きく響くことは疑いがありません。さらに、課税業者も大変です。1枚1枚の領収書をインボイスかどうか確認を迫られ、仕事をする時間も奪われかねません。影響を受けるのは、個人タクシー、シルバー人材センターで働く人々、いわゆるウーバーイーツ、ヤクルト販売員などのデリバリーパートナーなど、個人事業主の数は1000万人前後とも言われています。
●そこで伺います。町工場の多い大田区も大きな被害と営業困難を強いられます。地域経済を支え、業者の営業を支えるためにも、待ったなしの課題です。インボイス制度の中止を政府に申し入れるべきです。お答えください。
【松原区長】
次に、インボイス制度に関するご質問でございますが、消費税は国税であり、また、地方消費税は都道府県税であることから、その制度運用に対して、基礎自治体である区が意見を申し上げる立場ではないと理解しています。来年10月のインボイス制度運用開始を控え、区内3税務署より区内中小企業等への周知の強化に対する協力依頼をいただきました。これを受けて、区では、東京商工会議所大田支部や大田工業連合会、大田区商店街連合会といった区内経済団体を通じた制度の周知依頼や、税務署による出張説明の周知に協力するなど、制度運用開始に向けた区内企業の対応支援を行っております。なお、インボイス制度の導入に向けた準備に対しては、国の助成制度なども活用できる場合があります。インボイス制度の導入を含め、中小企業の経営のお悩み事につきましては、産業プラザPiO1階に開設いたしました総合窓口、PiOフロントでご相談いただくことも可能でございます。こうした様々な支援策を活用し、インボイス制度の運用開始に向けた区内企業支援を継続してまいります。
【黒沼議員】
次に、大田区の新おおた重点プログラムの更新に関して伺います。
重点プログラムは6本の柱を立てていますが、6本目に新たな自治体経営へのシフトを挙げています。その矛盾は、ウィズコロナ、アフターコロナに必要な出生率の向上、豊かな地域経済、脱炭素社会という項目を挙げながら、そこに新自由主義からの撤退というコロナ禍の教訓を学ばず、新自由主義に基づくスマート自治体、国土強靱化などが盛り込まれていることです。
典型的なのは、岸田内閣の新しい資本主義の構想である大田区のデジタル田園都市国家構想が中心になっています。デジタル田園都市国家構想とは、政府の説明によれば、産官学の連携の下、仕事、交通、教育、医療をはじめとする地方が抱える課題をデジタル実装を通じて解決し、誰一人取り残されず、全ての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現する、地域の個性を活かした地方活性化を図り、地方から国全体へのボトムアップの成長を実現し、持続可能な経済社会を目指すというものです。つまり、地方自治体に官民のデジタル投資を大幅に増加させることが目的であり、巨大な大企業奉仕につながりかねません。その問題点は、1、個人情報を非識別加工情報として、本人同意なく外部提供するプライバシーの侵害。他の情報と組み合わせれば、判別される可能性が出てきます。2、対面サービスの後退とそれに伴う自治体職員削減という住民サービスの後退、3、マイナンバー制度の拡大、4、官民癒着の拡大です。
今年度予算に盛られているのは、今後の自治体経営の在り方であり、デジタル人材活用など、政府の言うとおりの制度利用です。区は経費節減と言いながら、職員削減が目的であり、区民にとってはサービス低下と情報漏えいの危険が増すことになります。コロナが教えてくれたのは、人間が本来必要とされるものを日常的に準備しておかなければならないということです。
DXは本来、職員の利便性の向上、区民の福祉向上と持続可能な生活保障に役割を果たさなければならないのに、大企業の利益となってしまいかねません。スマート自治体は、AIとロボティクスを使って、自治体職員を半分にすると政府の自治体戦略2040に記されています。それは、民間企業にとって新しいビジネスを生むことになるとともに、公共サービスを提供する自治体から、公共サービスを管理するだけで、サービスの提供は民間にやらせることになります。そのために情報システムとICTを活用することで、自治体職員を半減できるというものです。窓口は各所証明書の自動販売機ではありません。そもそもAIは高度な道具であって、労働を奪うものではありません。自治体労働者がより的確で質の高い仕事ができる条件をつくり、区民の基本的人権を守る窓口業務の役割を果たすことです。窓口で区民が抱える問題を発見して、必要な行政支援につないでいく役割を担うという視点が必要です。機械に人を合わせるという視点であってはなりません。マンパワーこそ必要ということです。大田区はこうした予算を組んでしまったのです。
●そこで伺います。公務員は全体の奉仕者です。公共の福祉増進という公の役割を果たすマンパワー中心にして、職員を削減するのではなく、デジタルは職員の能力向上の手段にすべきです。お答えください。
【松原区長】
次に、デジタル化についてのご質問ですが、本来、DXとは、ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させることを意味しております。その上で、国は自治体のDX推進について、デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会を掲げ、情報システムの標準化、共通化、マイナンバーカードの普及促進等の取組を推進しております。一方、区におきましては、大田区情報化推進計画に国の取組を包含するとともに、キャッシュレス推進、データの利活用による多様な主体との連携に加え、スマートフォン相談会など、情報格差、いわゆるデジタルデバイド対策を進めており、さらなる行政サービスの向上に資する取組を行っております。これらDXの取組は、事務の効率化、職員の能力を最大限に活かし、より区民が必要とするサービス、地域課題の解決へ注力することを可能とします。行政のデジタル化は、人々の暮らしを豊かにすることを主眼とし、デジタルにおける便益を誰もが享受できる地域社会を目指すことです。区民に対し、分け隔てない行政サービスの提供と、誰一人取り残さない包摂的な地域づくりに取り組み、デジタル化による公共福祉の増進を図るため、引き続きDXを推進してまいります。
【黒沼議員】
次に、新空港線について伺います。
我が党は新空港線には一貫して反対してきました。今月6日、区長は突然、新空港線整備事業について記者会見を行い、事業総額3分の1の都と区の負担割合について合意したことを発表しました。計画では、東急多摩川線矢口渡駅付近から地下化、東急蒲田駅も地下化とあります。地下化の東急多摩川線蒲田駅と地上のJR蒲田駅の乗換えは、現在3分58秒と言われていますが、約5分20秒かかってしまうという報告でしたが、そうすると、逆に不便になります。計画に輝くまちづくりと記されていますが、根拠がありません。川崎のラゾーナの例では、建物の中はにぎわっているが、周辺の車の渋滞だけがひどくなり、周辺の商店街はさびれてしまいました。まちのにぎわいにはなっていないのです。
●伺います。大田区は区民の利便性とまちづくりに寄与するとしていますが、東急多摩川線のほとんどの駅に止まることなく、しかも、近隣住民の安全性の上からも強い要求である下丸子1号・2号踏切の解消が新空港線工事と一緒に行われる計画のため、計画では13年以上待たされることになり、利便性どころか、不便になるとともに、まちづくりに障害となることです。我が党が一貫して求めてきたように、単独で工事すれば、はるかに早く解消するはずです。お答えください。
【松原区長】
次に、下丸子駅周辺の踏切についてのご質問でございますが、下丸子駅周辺地区では、令和3年度より地域の方々との勉強会を開催し、地元関係者と検討を行うなど、地域の特性を活かしたまちづくりの取組を進めております。今後、まちづくり構想やグランドデザインを策定した上で、具体的な踏切対策について検討を深度化してまいります。一方、新空港線につきましては、今回の都区合意により、事業化に向けて大きな一歩を踏み出しました。今後、下丸子駅周辺の踏切対策との整合性を図りながら、より効果的かつ効率的なものになるよう、区が主体となって検討を進めてまいります。引き続き、新空港線の整備とともに、踏切対策も含めた沿線のまちづくりとの一体的な検討を進め、利便性が高く、安全・安心なまちの実現に取り組んでまいります。
【黒沼議員】
また、新空港線の効果として、「羽田空港と渋谷、新宿、池袋などの拠点を直結し、国際都市東京の鉄道ネットワークを強化する」と書かれています。それなのに、東京都と大田区の負担割合は3対7と圧倒的に大田区の負担になりました。総費用が100億円増えて1360億円とのことですから、総事業費を国、自治体、事業者がおのおの3分の1負担ですから、自治体は大田区と東京都で453億円です。大田区の7割負担ということは317億円です。さらに、大田区は第三セクターに入りますので、経営権を握るには50%を超える出資が必要です。その金額は46億円です。合計363億円になり、大田区の歴史上最高金額の事業になります。区は合意文書で、この膨大な費用への対応として、特別区都市計画交付金の対象にできるよう、都と大田区は調整を行うので、財政負担は大幅に圧縮できると説明していますが、その保障はありません。さらに、この金額に都市計画の下丸子と蒲田のまちづくり関連費用等が加算されることが予想されます。国際都市東京の鉄道ネットワークを強化することに363億円も使われるなど、区民が納得するでしょうか。
結局、新空港線整備計画は360億円を超える区財政投入となり、「限られた経営資源を区民が真に必要とする施策に再配分していきます」と言いながら、積立基金は90億円にもなり、不足分は他の施策の削減で捻出するしかなく、暮らしや福祉の切捨てにつながり、区民犠牲となりかねません。
●伺います。膨大な新空港線整備計画費用が区の暮らしや福祉の切捨てにつながり、区民に多大な犠牲を強いることになるおそれがあります。事業は中止すべきです。お答えください。
【松原区長】
次に、新空港線に関するご質問でございますが、新空港線の整備は、区の40年来の悲願であり、最も重要な事業の一つであります。新空港線により、区内の東西交通の分断が解消されるとともに、区内各地から渋谷、新宿、池袋などの各都市や、和光、所沢、川越などの埼玉方面及び羽田空港へのアクセスが便利になります。また、沿線のまちづくりを併せて行っていくことで、区内における地域の活性化にもつながります。加えて、災害時の代替ルートの役割も期待されており、今後の区及び首都東京の発展にとって重要な事業であります。協議の場の中で行った需要予測では、費用便益比は2.0と高い数字が出ており、社会的に有意義な事業であるということが確認されました。また、整備主体の資金収支については、開業後17年で累積資金が黒字に転換するなど、良好かつ安定的な事業と言えます。さらに、今回の東京都との合意においては、事業費の圧縮や特別区都市計画交付金制度についての内容も盛り込まれており、区財政への影響を最小限に抑えられるものと考えております。区のさらなる発展に向け、引き続き新空港線整備を推進してまいります。
大田区の「環境アクションプラン」の具体化と改善について
【黒沼議員】
次に、気候変動危機対策について伺います。
国連気候変動に関する政府間パネル、IPCCの報告には、既に陸上や海洋の生態系に取り返しのつかない損失をもたらしている、世界人口78億人の4割を超える人々が対処できない脆弱な環境の下で暮らしているとあります。対処方法は、温室効果ガスの排出量を減らし、脱炭素社会をつくるしかありません。国連のグテーレス事務総長は、世界は今行動しなければ、いくつかの大都市が水没し、熱波や嵐が激しくなり、生物の大量絶滅が起きると述べ、これは空想でも誇張でもない、科学が告げていると述べました。
日本政府は2050年までの温室効果ガス排出量をゼロにするとしていますが、残念ながら、2030年までの目標が低過ぎます。できるだけ先延ばししているように見えます。再生エネルギー普及は、石炭火力の新増設、将来のない原発に依存、実用化のめども立っていない新技術に頼るなど、後ろ向きです。日本は世界5位の温室効果ガスの排出国であり、加害国です。例えばカーボンバジェット、温暖化を一定レベルに抑える場合に想定される温室効果ガスの累積排出量の上限値から見ると、日本の場合、65億トンしか出せません。現在、年11億トン出していますので、残り54億トンはあと6年しかもちません。危機感を緊急の行動に立ち上がろうとの認識に共通させ、世界水準では加害国の役割が不足しているという自覚が求められます。
世界の温室効果ガス排出量は今もなお増加を続けています。今こそ地域社会における資源循環を高めながら、気候変動に対する取組を大きく加速させなければなりません。
日本共産党は2030戦略を発表し、次の提案をしました。2030年度までにCO2を50%から60%削減する、省エネとともに、再エネ利用を組み合わせて実現する、エネルギー消費を4割減らし、再生可能エネルギーで電力の50%を賄えれば、50%から60%の削減は可能です。社会システムの大改革が必要ですが、それは寂しいものではありません。産業分野ではLED使用や省エネ、運輸、交通では電気自動車の開発と利用、都市では住宅、建築物の断熱、遮熱、太陽光発電普及などです。自然再生可能エネルギーの利用は、地方がやりやすく、都市は難しいという考えも今まではあったかと思います。しかし、このような都市でのチャレンジこそ求められます。東京都は第2回定例議会で補正予算を組み、高断熱住宅と太陽光発電補助72億円を計上しています。
大田区は工業主体の自治体であり、温室効果ガス排出自治体としての自覚が求められます。大田区は今年4月に今後3年間の大田区環境アクションプランを発表しました。プラン第5章、大田区気候変動適応方針の基本戦略は、情報収集、情報提供にとどまっています。
そこで、大田区としての気候非常事態宣言の提案をいたします。区長は第1回定例会でゼロカーボンシティ宣言をしたと述べましたが、表明しただけです。文書化されていません。23区では、世田谷区、足立区、北区、中野区、墨田区などで文書化されています。区はホームページに「4分で分かる“脱炭素社会”」という動画を載せてありますが、視聴回数は今日、6月15日現在、たった346回です。決して多いとは言えません。これでは、気候変動対策に協力したいが、どうしたらいいか分からないという区民に対して伝わりません。分かりやすいアピールが必要です。区民に理解してもらい、協力してもらわなければ成功しません。
●伺います。区民と共に、気候変動に対して行動を起こすときと考えます。よって、ここに気候非常事態宣言文書を作成し、区民に届け、丁寧に説明し、協力を求めることを要望します。お答えください。
【松原区長】
次に、気候変動に関するご質問ですが、区は本年2月、2050年に温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すゼロカーボンシティを宣言しました。本年3月には大田区環境アクションプランを策定し、本プランにおいて、SDGsのゴールを大田区環境版ローカルSDGsとして、より具体的でイメージしやすい言葉で表現することにより、区民と目標の共有を図っており、また、区民一人ひとりが環境配慮行動を実践する区民運動、おおたクールアクションを推進し、本運動に賛同する事業者、団体と共に、脱炭素社会の実現を目指しております。さらに、区ホームページやSNS等を活用した情報発信や動画配信などの普及啓発に取り組んでおり、中でも、「5分で分かる環境問題~みんなで守ろう地球の未来~」の動画は、再生回数が5万回を超えるなど、大変好評をいただいております。区は、今後も区民の皆様と目標、ビジョンの共有を図り、気候変動に適応した脱炭素型への行動変容を促す施策を推進してまいります。
【黒沼議員】
二つ目は、省エネと再エネは新たな雇用と投資を生み出します。日本共産党は2030年度までにCO2を最大60%、2010年度比で削減するために省エネと再エネを最大限に推進すれば、254万人、雇用が増え、GDPを205兆円押し上げることができると提案しています。大田区環境アクションプランは、2030年度までに国の目標と同じ2013年度比の46%削減となっている目標を引き上げることは当然です。第1回定例会で日本共産党大田区議団は、プラン第5次の見直しと太陽光発電システム設置助成の復活を求めました。これこそ取り組むべき事業ではないでしょうか。
神奈川県小田原市、酒匂川沿いの、農業をしながら太陽光発電に取り組むソーラーシェアリングに取り組んでいる、かなごてファーム代表の小山田さんは、ソーラー発電の初期投資は1600万円、うち600万円が国からの補助金、実際の投資は1000万円、毎年120万円の売電収入なので、10年で採算が取れるとのことです。11年目から借金はなくなりますので、再エネ事業は中長期で見れば、うんと利益が出ることになります。大田区も取り組むことを求めます。
●伺います。中小企業の脱炭素化を推進するため、グリーンリカバリー設備投資補助金制度の創設を求めます。横浜市では、省エネを目的とした空調や照明など、必要な設備の導入経費を助成する内容です。補助対象の経費が50万円以上で、経費の2分の1が補助で、上限200万円です。対象は、空調設備やコンプレッサー、LED照明、冷凍・冷蔵設備、コジェネレーションシステムなどです。好評で今年度は既に予定に達したため、受付が終了したとのことです。大田区でもぜひ取り組むことを求めます。お答えください。
【松原区長】
次に、中小企業の脱炭素化に向けた助成に関する質問です。区では、ものづくり工場立地助成制度において、省エネルギー設備の導入も含めた設備投資に対し、上限1000万円の助成を行っております。また、東京都におきましても、ゼロエミッション強化に向けた省エネルギー設備の導入に上限1億円の助成を行っております。さらに、このような助成金の相談から経営全般の相談に至るまで、大田区産業振興協会では、ビジネスサポートサービス事業において、きめ細やかな相談対応も行っております。引き続き区内中小企業の脱炭素化の取組を支援してまいります。
【黒沼議員】
次に、公共施設の建て替え時期に来ています。今こそ気候変動対策のチャンスです。6月13日に参議院本会議で、住宅を含む全ての新築建造物に省エネ基準適合を義務づける建築物省エネ法案が全会一致で可決、成立しました。2050年までにカーボンニュートラルを実現する最低限の条件です。しかし、新築戸建ての8割は既に満たしていると政府は答弁していますので、さらに進めるには、リフォームやアパートの貸主への支援が求められます。
●お聞きします。公共施設のZEB化、実質排出ゼロとして、新蒲田の施設について、ゼロエミッションビルになるために、遮熱塗装や断熱材の活用、断熱性能の高い建築の選択、可能な限りの太陽光省エネ製品の活用、省エネ型機械の導入、LED照明、省エネ型冷暖房設備の選択、高断熱窓の設計は全て採用されたのでしょうか。今後、計画されている公共建築物はZEB化として取り組まれるのでしょうか、お答えください。
【松原区長】
次に、新蒲田一丁目のカムカム新蒲田における省エネルギー対策に関するご質問ですが、本施設につきましては、太陽光発電をはじめ、エネルギー消費効率が優れた空調設備、LED照明、ペアガラスなど、環境負荷に配慮した製品を導入しております。法令により求められる省エネ性能を大きく上回る建物となっております。今後、公共施設を更新する際には、大田区公共施設等総合管理計画に基づき、ZEBの基準を目指してまいります。
【黒沼議員】
持続可能なまちづくりとして、お隣の川崎市の例を紹介します。川崎市の日本共産党川崎市議会議員団は、大友詔雄氏を長とする自然エネルギー研究センターに依頼し、自然エネルギー100%自給は可能という報告書をまとめました。大友詔雄氏は工学博士で、総務省の地域資源・事業化支援アドバイザーを務めています。大友詔雄氏が代表取締役を務める自然エネルギー研究センターは、1999年創業で、特許として太陽熱蓄熱システムなどを持っているとのことです。川崎市は人口154万人の政令都市です。報告書をまとめた大友氏は、一般家庭より企業による使用が圧倒的に多い大工業都市の川崎市で自然再生エネルギーで100%賄うことができるということになれば、2050年にCO2排出量ゼロというパリ協定、SDGsの目標実現に大きな希望をもたらすといいます。報告書で試算の前提にしたのは、1、省エネの徹底、2、技術進歩による効率等の向上、3、太陽光発電の設置場所の拡大の3点です。さらに今後、川崎市は人口減少と産業構造の変化と電気自動車の普及、太陽光発電の耐用年数が40年と向上していることを試算の条件として、川崎の使用電力が32%減ることを前提にしています。大田区も設定すべきです。CO2削減には、こうした省エネのほかに、植林や区民の生活様式を変えることも求められますが、省エネの中心は自然再生エネルギー、特に太陽光発電を使うことが決定的な方法ですと大友氏は言っています。
前提の2については、太陽光発電変換効率の技術進歩が著しく、パネル1枚の高利率―モジュール変換効率といいますが、現在、15から20%ですが、神戸大学は50%を超える技術を発表しています。そうすると、2倍以上の効率です。こうした努力による再生可能エネルギーで100%賄うことができるという試算です。そうすることで、2050年にCO2排出量ゼロというSDGsの目標実現に大きな希望をもたらすと言っています。この結果、太陽光発電だけで目標の9割を充足し、風力などを合わせて100%はできるとなりました。コストもシステム費用が年々低下傾向にあること、太陽光発電の資本費の推定値も2040年には2020年の半減と予測できるなど、明らかにしました。大友氏は、化石燃料から再生エネルギーに切り替えるいいタイミングです、そこに雇用も生まれてくると延べ、各自治体でも取り組んでもらいたいと話しています。
大田区は川崎市とほぼ同じ条件で考えられます。大田区としても、先に述べた3条件で試算することを求めます。
大田区では、臨海部の工場や事業所、倉庫や空き地、公共施設等があります。さらに、設置場所では、世界で既に多様な活用が進んでいると大友氏は言います。フランスの道路、ドイツでは道路に埋め込む太陽光発電、アメリカでは用水路の上、日本でも駐車場、倉庫のひさし、ビルの壁面などです。大田区では導入も検討できると考えられます。この分野にきちんと投資をして、区民の暮らしも町工場の技術も活かせて、地域経済もよくなるし、地球環境をよくしていく流れに変えることができます。
大田区は送電会社が自然再生エネルギー使用発電会社と契約変更することでCO2削減をしています。しかしながら、区の委託施設以外の直営の施設で支払われた昨年度の電気料金は13億4000万円程度とのことです。この予算額にほぼ匹敵する区の事業は、重点事業の中で、防災予算13億1400万円、ICT教育15億2800万円などです。これだけの金額の事業を区内で循環させることができれば、区民のための施策の充実が計り知れません。
●そこでお聞きします。自然エネルギー研究センターが行ったような試算をし、大田区でも実行すべきです。お答えください。
【松原区長】
次に、再生可能エネルギーに関するご質問ですが、区は、大田区環境アクションプランに掲げる基本方針の一つ、脱炭素まちづくりの推進の取組において、建築物や移動手段の脱炭素化、太陽光発電等の再生可能エネルギーの導入を促進することとしております。これらの取組を強化、加速化するため、現在、(仮称)大田区脱炭素戦略の策定を進めております。策定に当たりましては、気候変動の影響分析や区内温室効果ガスの分析のほか、太陽光、太陽熱等の再生可能エネルギーの可能性について調査を実施します。この脱炭素戦略に基づき、「環境と生活・産業の好循環を礎とした持続可能で快適な都市(まち)」の実現に向けて取組を進めてまいります。
ジェンダー平等とSDGsに基づく大田区の改革について
【黒沼議員】
次に、ジェンダー平等とSDGsについて伺います。第1回定例会で日本共産党大田区議団は、パートナーシップ条例をかつて条例提案した会派として、東京都で来年度から実施することに伴って、大田区も実施をと求めました。大田区は見守りたいとの残念な答弁でした。
実施区は23区中10区となっています。さらに杉並区では、パートナーシップ制定を求める陳情が全会一致で可決するなど、大きく前進しています。
●伺います。大田区もこの流れを受け止めるべきです。パートナーシップ条例を見守るとの答弁でありましたが、制定すべきです。お答えください。
【松原区長】
次に、パートナーシップ制度に関するご質問ですが、現在、都議会定例会において、東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例の一部改正案が審議されております。今回の改正で、東京都パートナーシップ宣誓制度が創設され、多様な性に関する都民の理解を推進するとともに、性的マイノリティーのパートナーシップ関係に係る生活上の不便等の軽減など、当事者が暮らしやすい環境づくりにつなげるとしております。なお、令和3年度末に東京都が実施した本制度素案に対するパブリックコメントでは、制度導入を歓迎する一方、証明書の不適切な使用方法を懸念するなど、様々な意見がありました。このようなことから、区におけるパートナーシップ制度の制定につきましては、東京都条例案の審議状況やパブリックコメントの内容を踏まえ、様々な視点から慎重に対応してまいります。
【黒沼議員】
新おおた重点プログラムには、SDGsのジェンダー平等との関係が述べられています。1、良質な保育環境の維持・向上、2、保育人材の確保、保育の質の向上、3、安全・安心な放課後の居場所づくり、4、在宅子育て支援事業等の拡充、5、多様な人々が活躍できるまちづくりの5点です。
新おおた重点プログラムには、新たにSDGsの理念を取り込んでいますと記されています。SDGsの理念とは、誰一人取り残されない社会です。それを目指して持続可能な社会を開発していくことです。
ジェンダーとは、生物学的性差ではなく、社会的、制度的、文化的につくられてきた性差を指す概念的な言葉です。世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数で、日本は156か国中120位です。女性の生きづらさとともに、日本の男性、特に30代から40代は世界で一番の長時間労働をしており、男の役割を負わされてきました。大田区は4月現在、部課長181人中31人が女性で17.1%、昨年17.7%より下がっています。大田区が目指しているのは、2025年までに22%以上です。
●伺います。男女共同参画意識の向上に向けての項に、男は外で働き、女は家庭を守るべきという考え方に「同感しない」が69.85%ですが、大田区の目標値は85%です。この目標に到達するためにも、区長が先頭に立って、女性が幹部になるための環境整備をするなどして、積極的に女性の幹部登用をすべきではないでしょうか、お答えください。
【松原区長】
次に、女性の幹部登用に関するご質問ですが、区は令和3年4月に職員のワーク・ライフ・バランス推進プランを策定しました。本プランでは、令和7年度までに女性管理職の割合を現状から5%引き上げ、22%以上になることを目指しております。目標達成に向けて、現在行っている具体的な取組としては、職員自身が仕事を通じて実現したい将来像をイメージし、働き方の軸探しを支援するキャリアデザインセミナーの開催など、様々な視点から職員のモチベーションの維持向上を図っております。さらに、職員が家庭において育児や介護等に取り組みながら職務との両立を図っていくことが、ひいては女性の昇任意欲の醸成に資することから、休暇制度の充実や、職場における円滑なコミュニケーションへの取組を進めております。区民に信頼される区政運営を進めていくためには、職員一人ひとりが持てる能力を最大限に発揮し、意欲的に職務に取り組むことが何より重要でございます。引き続き、職員が働きやすい職場環境を整えていくとともに、女性の管理監督職への昇任意欲の醸成を積極的に行い、女性がさらに活躍する組織づくりを進めてまいります。
【黒沼議員】
女性の経済的自立の弱さは、何かあれば食べることさえ困難になることに直結しています。平均して女性の賃金は男性の55%です。賃金格差の要因に、従来、女性が多く働いてきた介護、保育、福祉などのケア労働の賃金が他産業より低いことがあります。全産業平均33万6000円に対して、保育士は24万9800円、介護職員は25万2300円と8万円の差があります。保育士などの賃金も勤続年数は12年で頭打ちとのことです。その後は給料が上がらない、寝たきり賃金となります。
自治体は官製ワーキングプアを生み出している当事者です。公務の雇用破壊が起きているのは、公共サービスの産業化政策が大がかりに進められているからです。政府の進めるスマート自治体構想で、多くの業務がアウトソーシング、民営化、指定管理制度に変えられ、多くの業務が派遣、契約社員、パートなど、非正規雇用に代替させられています。2020年度から採用された会計年度任用職員制度では、臨時職員の待遇改善を進める名目で契約更新を限定させ、正規化を拒むものとなっています。
岸田総理が5月に労働者301人以上の企業に男女賃金格差の公表を義務づける方針を表明しました。企業が男女賃金格差の実態を把握し、公表制度をつくることは、日本共産党が繰り返し求めてきたものです。開示義務化は国民の声です。日本の女性の賃金は、正規労働者で男性の7割台です。非正規雇用を含む年間平均賃金は約240万円、40年勤務では1億円の差です。年金にも差がつきます。この格差の大きさは、OECD加盟国で42か国中3番目です。世界の潮流に追いつかなければなりません。
●伺います。区が男女の賃金格差是正のため、区内企業に賃金実態の公表を求めるとともに、プロポーザル方式で契約する事業者選考の評価項目に男女の賃金実態を盛り込むことを求めます。お答えください。
【松原区長】
次に、男女の賃金格差是正のため、賃金実態の公表を求めるとのご質問ですが、本年夏に女性の職業生活における活躍の推進に関する法律が改正され、常用労働者301人以上の事業主に対し、男性の賃金に対する女性の賃金の割合を開示することが義務化される予定でございます。開示は法律に基づき義務づけられるものですので、現時点で区として公表を求める考えはございません。また、プロポーザル方式の事業者選考においても、男女の賃金実態を評価項目に盛り込む考えはございません。区が昨年度改定した第8期大田区男女平等参画推進プランは、女性の職業生活における活躍推進計画も包含しており、引き続き、本計画に掲げる事業を推進することで、SDGsの開発目標5にありますジェンダー平等を進め、性別にかかわらず誰もが活躍できる社会の実現を目指してまいります。
【黒沼議員】
ジェンダーギャップ克服1位のアイルランドでは、週4日労働の実証実験の結果を公表しました。保育や福祉の公務労働者2500人が給与水準そのままに、週40時間労働を三十五、六時間に短縮したところ、ストレスや燃え尽き症候群リスクが軽減され、健康やワーク・ライフ・バランスの改善、家族との時間や趣味や家事の時間が増え、生産性は向上しました。その後、労働者全体の86%が労使協約で賃下げなしの時短勤務に移行予定となっているそうです。イギリスでは、世界最大規模の週4日労働の実証実験が始まりました。スペイン、ニュージーランド、フィンランドの首相が賛意を示すなど、世界的な広がりを見せています。
●厚生労働大臣告示で示されてきた残業時間について、週15時間、月45時間、年間360時間を守るべきです。しかし、第1回定例会での私の質問で、感染症対策課の保健師の残業時間は、2020年1月は7時間、2月47時間、3月71時間、4月91時間、5月41時間、7月63時間、8月65時間など、厚生労働省の45時間をかなり上回っていると指摘し、改善を求めましたが、今年度予算で相変わらず兼務が基本で、抜本的な改善はされませんでした。兼務では改善されないのではないでしょうか。45時間は守るべきです。お答えください。
【松原区長】
最後に、保健師の勤務環境の改善に関するご質問ですが、区は感染症の拡大以降、保健所の人員体制を適宜強化し、対応してまいりました。また、保健師については、福祉部からの兼務配置に加え、大田区職員定数基本計画に基づく適正な管理の下、職員数を増員するなど、全庁一丸となった連携体制により、全力を挙げて対応しております。さらに、現在は、日々の区内新規陽性者数を指標としたフェーズを設定し、必要に応じて全部局からの応援を実施する仕組みを構築することで、保健所の体制を強化しております。引き続き新型コロナウイルス感染症への対応に取り組んでまいります。