区内基盤技術を活かす政策を
先端企業とベンチャーのみではなく区内基盤技術を活かす政策を
2019年第一回定例議会 一般質問 黒沼良光 2019年2月15 日修正
日本共産党大田区議団、黒沼良光です。質問通告に従って順次質問します。
まず、安倍内閣と財界の戦略であり、2018年度版「経済白書」の副題になっている「今、Society5.0の経済へ」と羽田空港跡地第1ゾーン」の関係と、「経済白書」の説明書きにある「AI,ロボット、ビッグデータなど近年急速に進展している第四次産業革命のイノベーションを、あらゆる産業や社会生活に取り入れること」と「羽田未来開発」株式会社の関係についてお聞きします。
実は、今年の松原区長の庁内報での新年のあいさつの内容の半分程が、私が読み取った限りでは正にSociety5.0です。こう言っています。「ダボス会議でのデジタル専制政治」を取り上げていますが、一部のエリート層とAIが世の中を統治するというものです。つまり一部の人が中心になってAIを動かし、AI自身が独自の判断を行いながら社会を動かすというものです。これを追跡していきますと安倍政権と経済同友会などの財界のSociety5.0、超スマート社会にたどり着きます。区長は「AIの分析データの所有が人類を凌駕する理論であると強調し、昨年の第4回定例会議のあいさつでのSociety5.0、いわゆる超スマート社会の到来を可能な限り、施策推進に活かしていきたい」との発言とも合わせると「こうした変化する世界の中で区民の皆さんが日々を健康で穏やかに過ごされることが私どもの願いです」と大田区民とデジタル専制政治Society5.0との関わりで健康で穏やかに過ごされることが私どもの願いです」と強調します。そして、鹿島を代表とする9社グループ、「羽田未来開発」株式会社と結んだ事業契約は、先端産業分野、つまり航空・宇宙産業、ロボット産業、健康医療産業、その他今後の成長が見込まれる産業分野であり、このことが大田区への産業分野への波及効果を増大させます。」という内容です。まさに[Society5.0]の内容です。安倍内閣と財界の戦略です。Society5.0とは、AIとIoTとビッグデータという三種の神器を活用してこれまで人間がやっていた仕事を、ビッグデータの解析をAIに解析させて現実空間にフイードバックさせることで、人工減少・高齢化、エネルギー・環境制約などあらゆる問題を解決できるというのです。しかし、ビッグデータという情報は民間の特定の発信者、受信者の支配するデータです。公的機関のコントロールが効かないシステムです。それは大企業の利益のために働くことになるだけで、人工減少・高齢化、エネルギー・環境制約など様々な社会問題を解決できるわけがありません。AIが人間に代わって社会を変革してくれるわけではありません。空港跡地がこのようなAI,ロボット、先端医療などのために使われようとしています。第1ゾーンでのトヨタ関連で行う無人自動車の開発やロボット開発、川崎殿町地域と結ぶ先端医療産業などは、はまさにその具体化です。
これらに関われる区内中小企業は果たしてどれくらいあるのか、区はこれまで何度聞いても一切あきらかにしてきませんでした。昨日の区長答弁にもありませんでした。なぜ明らかにできなかったのか、それはこのような内容で区内中小企業を救うことは不可能だからです。
羽田空港跡地第1ゾーンをこのような実験台に、大企業の儲けに活用させるわけにはいきません。
Q1、そこでお聞きします。今でも、大田区は区内中小企業の活性化のためと言いますがどのような根拠をもっているのでしょうかお聞きします。
このようなSociety5.0・超スマート社会の流れに乗るような大田区の産業政策ではなく、1昨年の第3回定例会でも申し上げたことですが、改めて区内企業の発展は、3つの特徴を活かした母工場都市機能を発揮し、4つの分野で発展させることこそ未来ある方向だと、「日本の宝、中小企業・小規模企業ビジョン」を日本共産党大田区議団は作成しました。特徴は以下の通りです。
一つは、汎用型の技能・熟練の形成・伝承です。
量産部品加工以外の中小企業では、様々な業種の多様な製品や部品の加工に関わるため、使用している機械類の能力を最大限に利用し尽くす必要が生じるため、技能の幅は大企業よりも広く、またフレキシブルになり、高品質・短納期での多品種少量・一品生産を支える技能の蓄積があります。
二つは、マザーマシンの法則への対応が可能ということです。所謂、機械をつくる機械のことですが試作品をつくる必要条件と言えます。現場での工夫・改良に基づくプロセス・イノベーションの能力です。中小企業の現場では如何に早く、効率的に、ロスを少なくして、安価に生産するのかに関わる技術革新がおこなわれ蓄積されています。この仕事は海外移転による仕事減少の中でも必要とされています。
三つは、大企業の企業内に閉じ込められた「私有財」としての技能・熟練ではなく、多様で高度な専門特化した生産・加工技術を誰もが注文し活用できる、あたかも「公共財」としての地域的集積としての役割です。このことこそが母工場都市機能を発揮できうる大田区の宝物です。大企業とは異なる重要な部分を占めており、どんなにグローバル化、生産の海外移転をしてもその役割は必要だし、それはME化の高度化で代替えできないものです。だからこそその技術を区として把握し、フルセット型といわれた機械金属加工、幅広い機械金属加工の加工機能連関の集積は日本一です。こうした中で地域中核企業の成長と小規模企業ネットワークを軸にした独自市場の開拓による自立型工業集積地への挑戦がいま多様な形態をとりながら進み始めています。これらを大田区の集積の力を区全体の大きな異業種集積工場としてとらえ、母工場都市機能を兼ね備えた大田区をつくり上げ、小規模企業振興基本法に基づき、受注難にあえいでいる小規模企 業に的を絞った自立的製品への支援策などを強化する方向にこそ大田区は進むべきです。来年度予算で新たに「受発注支援事業の立ち上げ」と5年ぶりの3人以下も含む実態調査である「産業等実態調査」と大田区産業振興構想策定がこのような歴史と価値を受け継ぎ、発展させることに寄与できるよう期待するものです。
小規模企業振興基本法が制定されている今日、日本共産党大田区議団は、小規模企業に的を絞った支援策の整備が求められています。受注難に喘いでいる小規模企業での製品・技術開発は仕事の自主的な創出につながる試みであるととであるとともに、従来のネットワーク力のさらなる質的向上が実現し、受注範囲の拡大が可能になると考えます。今、新製品開発支援事業がさらに使いいがってがよくなる威容改良を求めるとともに、より多様で、より充実した自立化支援政策を求めます。
日本共産党大田区議団は改めて3つの特徴を活かした母工場都市機能としての「大田区の4つの産業政策の充実」を提案します。
第1の方向は、自立型工業集積への展望です。
下町ボブスレーの開発に始まり、スポーツ車いす開発・実用化などは軽くて、弾力性を保った素材加工技術と表面処理技術など、最先端のハイテク技術と高度な技能、熟練を結集した新分野開拓への挑戦は、部品加工業の集積から最終製品を生み出すことに繋がります。「オーダーメイド式に対応できる技術」の実績を生かし、自立型工業集積への展望を切り開く方向です。
第2の方向は、医療機器分野へのさらなる進出です。
メカニックな機能を有する機械と使用者が手にして一定の効用を生み出す道具の二種類があります。医療分野では残念ながら多くを輸入に依存するというアンバランスな状態が大田区には生まれています。高度な医療機器を開発するには大田区のような少量生産で一品一品に技を込める職人集団の連携が不可欠になります。最先端ではなくともモノづくり最前線に必要な技術力が現在でも町工場には蓄えられています。先週訪ねた南蒲田の町工場、81歳のOさんを訪ねました。資本金72億円、従業員1400人の防衛、航空などの精密電子機器めーかーの区内大手企業から注文を受けて仕事をしているmp30年間、凄腕のひとです。このような難加工をこなす人はほとんどいなくなり、注文先から「やめないで」と言われている状況です。ベンチレースを自ら修理しながら製品ごとにバリ取りの工具もつくりだし、0.2ミリの穴開けをします。しかしその単価は25年間変わらず、1個、50円という安さです。技術も素晴らしいものでした。その能力を活かし、新市場を開拓するため「医工連携支援センター」を設置し、医療現場のニーズと機械産業の技術シーズを結び付ける場をおおいに拡張することを求めます。
第3の方向は 自然再生エネルギー関連への進出です。
自然再生エネルギー分野は無限の可能性があります。原発に関わって仕事をしてきた優秀な中小企業・小規模企業がたくさん大田区にはあります。そうした企業が自然再生エネルギー分野で技術を発揮することは確実です。原発をやめ、自然再生エネルギーに転換したドイツで証明されています。ドイツでは原発をやめても廃炉にするのに少なくとも60年間は仕事が無くならないとともに、自然再生エネルギーの仕事で600万人の雇用拡大になっています。
第4の方向は 新たなマーケットとして、農業分野への進出です。
野菜や果樹の栽培は機会が遅れています。これもドイツなどの輸入に頼っているのが実情です。 大田区では秋田銀行と「大根の持ち上げ機」1機60万円で納入の1件、北洋銀行と「木の苗植え付け用ドリル」1本19万円で5本納入済みの1件、山陰合同銀行と 「ミニ植物工場」発展8社が集まる異業種交流会で1機100万円で納入などの実績がありますが、これを抜本的に発展させることです。
以上、こうした新しい挑戦領域を大田区工業の階層構造に応じた形で、基盤技術を形成する小規模企業中心型の挑戦タイプと製品開発型企業層がイニシアチブを発揮し、最先端分野に挑戦するタイプ、従来型の製造技術を基本に一定の改良、応用を付加して農林漁業や地域社会で求められる製品を提供する自律的なネットワークに大別し、支援する仕組みをつくり、母工場都市機能としての機能を果たしていくことが、待ち工場から一歩すすんだ仕事づくりへとステップアップする可能性が開けてくると確信します。
Q2,お聞きします。先端技術、ベンチャー企業だけに頼るのではなく、国も持続的支援を小規模企業振興法に盛り込んだわけですから、大田区もこの3点を十分汲んでの産業経済政策にすべきです。お答えください。
小規模企業振興法は、従業員20人(商業・サービス業は5人)以下の小規模企業が地域経済の支え手として、また雇用の担い手として大きな役割を発揮していることに着目し、事業の持続的発展を支援する施策を国・地方公共団体などが連携して講じるよう求める法律です。中小企業基本法との関係では1999年の改定で大企業と中小企業の「格差是正」を放棄し、支援策を中堅企業や急成長型の中小企業に特化させた結果、小規模企業施策が後退し、小規模企業数は423万者から2012年の334万者へと激減しました。大田区も例外ではありません。雇用の場も減少し、地域経済も落ち込みました。小規模企業に再び光を当てざるを得なくなったという政権側の矛盾でもあります。2013年の中小企業基本法の改正で目標に「小規模企業の意義の重要性」が追加され、小規模企業振興法第1条に中小企業基本法の基本理念にのっとり、」とされ、位置づけられたのです。
その特徴は3つです。一つは「成長発展」のみならず、技術やノウハウの向上、安定的な雇用の維持などをふくむ「事業の持続的発展」が重要と位置付けていることです。二つは単に個別に支援するに留まらず、商業集積や産業集積に果たす役割を評価し、「面」として支援する必要性を位置付けています。正に大田区にうってつけの内容です。三つは従業員5人以下の小規模企業に着目し、この規模の振興が必要だとし、より個々の状況に寄り添った支援を求めています。
大田区は「産業のまちづくり条例」があると言いましがこれらの実情に適合していません。第一に産業者として大企業との役割と中小企業・小規模企業の役割が明確にされていないことです。工業・商業とも空洞化が進行し、倒産、廃業、夜逃げ、失業、などの要因に下請けいじめ、海外移転などで利益を上げている大企業の身勝手なふるまいがありますが大企業に対して社会的責任と役割を求め、中小企業・小規模企業に光をあて、区民の暮らしと営業を守るための実効性ある条例にすることです。第二に、「産業のまちづくり条例」には生活環境と調和する産業のまちづくりを推進し、もって区民生活の向上に寄与する」とここでも中小企業・小規模企業は主役からはずされています。明確に中小企業と地域経済の健全な発展と区民福祉の向上に寄与する」と明確にすべきです。
Q3、そこでお聞きします。今回条例提案も予定していますが、実態に合わない、産業のまちづくり条例を変えて、国の小規模企業振興法を国がつくったように、また東京都が中小企業・小規模企業振興条例をつくりましたが、大田区でも作ることを求めます。お答えください。
そのために、提案します。1、仕事確保のための職員をせめて10名増員、2東糀谷工場アパートのような経営支援としての1カ月5万円の工場家賃支援、3、以前有効な役割を果たした「ものづくり経営革新支援事業(最高1社55万円)の復活、4、中小企業後継者支援(1人200万円)5、次世代人材確保事業(1人12万円)の充実。 以上、これらを実現していくためには、産業経済予算を適切に増額することが求められます。以上、要望してすべての質問を終わります。